黄金州の殺人鬼【捜査録】逮捕を待たずに作者死去

終身刑確定のニュースを受けて、亜紀書房「黄金州の殺人鬼~凶悪犯を追い詰めた執念の捜査録~」を読みました。これまた興奮しきり。おととし四月に逮捕されたので、覚えている人も多いだろう。

1974年から1986年までの間に、カリフォルニア州で少なくとも13人の殺人、50人以上の強姦、100件以上の強盗を犯したシリアルキラー。だが、作者は逮捕を待たずに未完の書を残して逝去。

ミシェル・マクナマラ

ミシェル・マクナマラという女性は、コメディアンの奥さんで、気になった「黄金州の殺人鬼」についてネットで調べていくうちにどんどんのめり込んで、当時の捜査を担当した警察官や、被害者の遺族などにもガンガンとインタビューを敢行してデータを蓄積していく。

そして、全米が注目しているこの「過去のおぞましい事件」の迷宮入りと思われてる犯人をあぶり出していく。

その執念が本当にすさまじい。

だが、このミシェルさんは、書籍を書いている途中に心臓発作で睡眠中に他界。残された夫と、ネットでこの話題を共に議論しあってきた仲間が加筆してこのノンフィクション「黄金州の殺人鬼」が完成した。そして、巻末の名台詞

あなたにはそれがお似合いだ

が生まれる。犯人への手紙で終わる。そこにミシェルの無念はない。ここまでくれば、あとは必ず捕まるだろう、と。確信して死んでいったかのようだ。

出版イベント中に逮捕

出版後に、ミシェルの意をくんで、夫と仲間で出版イベントで各所に出向いた。

「この書籍によって、必ずや逮捕されるでしょう」

そう話してた時に、逮捕の報せが入った!
そう、逮捕されたのだ、本当に。

ミシェルの執念が結実した瞬間だった。ミシェルはそれで「自分の手柄にしたい」わけではない。逮捕に至ればそれでいい。そういう考えだ。言うなれば、そう。

天網恢々疎にして漏らさず

って奴だ。サイコーだぜ。

残忍な手口の連鎖

狙いを定めると徹底的にその家を調べて、堂々と入り込み、レイプする。殺す。暴れてものを壊す。

夫が居ようとお構いなし。というかそれを楽しむかのように、

妻に夫の手を後ろ手で縛らせてから、自分で妻の手を縛り、強姦する

そんなやり方だ。しかも、

縛った夫の背中に皿を乗せて、

「皿が割れたら、おまえらを殺す」

とのたまう。恐怖の底に突き落とすような行為。皿を乗せたまま、目の前で夫は妻をレイプされる。

そして、堂々と逃げる。なのに、捕まらない。

しかも、地域が「とても近い」場所ばかり。そうなった町は、夜になるのが「町民全員が怖い」という時期があった。そりゃそうだ。いつ「自分の家が襲われてもおかしくない」そんな雰囲気が町を支配していた。恐ろしい。

縛り付けてレイプする。そして逃げたと見せかけて、隣の部屋で音を立てずに居続ける。そして、1時間経過した頃に、被害者が、犯人が逃げたと思って動き出すとまた現れて痛めつける。顔を床にたたきつけて鼻の骨を折る。そしてまた隣の部屋に行く。

ここまで残忍な手口で脅されれば、その後、被害者は縛られた手をほどこうと動こうとは思わない。とても残虐で効果的な手口で、悠々と逃げていった。

ある被害者は死後三日経って発見された。

様々な呼び名

ゴールドステート・キラー(黄金州の殺人鬼)、イーストエリアの強姦魔、バイセイリアの荒らし屋、等、様々な呼び名があった。だがそれは、

それぞれ、別の犯人だと思って警察らがつけた名前だ。但し「黄金州の殺人鬼」だけはミシェルがつけた。そして、それらの犯人が「同一人物」であることがわかってから、更に状況は悪化していく。なのにどうして捕まえられないんだ?!という警察の尊厳に関わる問題だ。

DNAのデータベース化は、この事件がきっかけになってようやく動き始めたようなもの。

莫大なるデータを束ねたミシェル

作者の故ミシェルは、莫大なデータを逐一調べて線でつないでいった。そして、地域、身長、性格、などから、少しずつ少しずつ、範囲を狭めていって、そして逮捕に至る。ものすごいカタルシスだ。

だが、残念なことに、

警察は「この本が原因」とは言いがたい

と言っている。あらあら。やっぱ警察の沽券に関わることだから、素人女性の調査が元で捕まえることができました、とは言えないって事のようだ。

だが、それは、故人の夫にとっても(もちろん故人にも)どーでもいい。捕まったのだから。ざまーみろ。

対峙した被害者と犯人

被害者はサクラメントの法廷で、44年前に彼女をレイプした男──ゴールデン・ステート・キラー(黄金州の殺人鬼)として知られる被告人と初めて対峙した。 眼鏡をかけた女性の頭には白髪が目立つようになっていたが、供述は1976年7月、彼女が15歳の夜に起きたことから始められた。 彼女の両親はその日初めて、彼女と姉だけをサクラメントの家に残したという。そんな彼女たちには何事も起こらないはずだった。 ふたりは両親に言いつけられていたようにすべてのドアを施錠し、午後11時には就寝した。しかし翌日早朝、ジョセフ・ジェームズ・ディアンジェロが家に侵入してきたのだ。姉は縛られ、法廷に立つ彼女自身は口の上で手を叩かれ、目を覚ましたという。そして彼女は、何度も性的暴行を受けた。

ヤフーニュース
犯人ディアンジェロ
当時、頒布された似顔絵。似てる絵が出た時は犯行を控えた。

DNAが決め手となった

見事、警察は特定して、逮捕に至った。しかし、出訴期限法により、1970年代の殺人と強姦には適用できず、1980年代の事件のみへの対応となった。

6月、彼はカリフォルニア州の6郡の検察官との合意に至り、76件の罪を認めることと引換えに死刑の可能性から免れられることとなった。

ちんこが小さかった/早漏だった

そして、この「黄金州の殺人鬼」にも出てくるが、どのレイプ事件でも「オチンコが小さかった」という事が描写されている。そして、30秒の挿入で射精してる。つまり、

短小・早漏

だったのだ。なんだかなぁ~。レイプしてるワリに、セックスにはたいした興味がないらしく、ものを荒らしたり、被害者の思い出の品を盗んで金品を置いてったりしてる謎の行動歴。追っ手をピストルで撃ち殺す。犬の内臓を引き裂いて殺す。

ベビーローションを持ち歩き、それをチンコに塗って、被害者女性の手の上に乗せて「うまくやれよ」と命令する。

ローションがないときは、夫の前で妻にフェラチオを要求する

最悪だぜ。そして、逮捕された後、被害者の娘たちは「短小チンコを嘲笑して中指を立てた」。

この件で名を知らしめた「遺伝系図を辿る手法」はその後、他の方法では解決できなかったであろう何十件もの事件を解決に導いた。一方でこれは、プライバシーの侵害、そして遺伝子を監視されることに対する人々の懸念や恐れをかき立てることにもなった。 「黄金州の殺人鬼」事件に幕を下ろす時が来た──冒頭で登場した、15歳のときにレイプされた女性はそう語る。 「トラウマに苦しむのもここまで。彼は身の毛もよだつような酷い男ですが、そんな彼の存在を恐れる必要はもう、ないのです」

ヤフーニュース

僕が、このミシェルの本で刺さったフレーズは、

誰でも心の中にシャーロック・ホームズがいる

という言葉ね。ミシェルの手柄のようでそうではない。しかも、書籍の販売は、ミシェルのネット仲間の同じく調査隊メンバーの協力あって成り立ったこと。

ネット社会とDNA照合、そして、市井の人たち(ミシェルたち)の執念が結実した逮捕だった。

車椅子で現れたのは同情を引こうとしやがってと非難された。
40年ぶりに逮捕に至った。

犯人ディアンジェロの経歴は、元海軍軍人、元警察官、元トラック整備工だった。

黄金州の殺人鬼??凶悪犯を追いつめた執念の捜査録 (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズIII-9)

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彼女は陳述の最後にディアンジェロ被告を直視し、あなたが刑務所内で優遇されようとしても――自分がか弱い老人だと更生局を騙そうとしても、自分も含め関係者全員がこれを阻止する、と述べた。被告が最近老齢ぶりを誇示していたことに対して猛反発があがっていたことから、彼女の発言は拍手で迎えられた。

ローリング・ストーン

ディアンジェロ被告の量刑判決は、彼と被害者を題材にしたHBOのドキュメンタリー『I’ll Be Gone in the Dark(原題)』の初回放送の直後に行われた。全6話シリーズは、今は亡き犯罪作家ミシェル・マクナマラさんの2018年の同名著書がもとになっている。マクナマラさんは「ゴールデンステート・キラー」の命名者で、長年にわたり彼の足取りを追い続けたが、2016年に著書の完成を待たずに他界――殺人者の身元を突き止めるには至らなかった。友人や遺族によって完成した著書は2018年に出版。その数カ月後にディアンジェロ被告が逮捕された。

ローリング・ストーン

HBOがドキュメンタリーを作ってる。もう放送されているらしい。早く和訳されて日本でも見られるようにならないかしら。残虐な殺害現場も再現されるのかなぁ。されそうだなぁ、テレビじゃないもんね。(それがネットの良さでもあるが、書籍読んだ後だとキツイ)

投稿者:

宮川賢

何しろ、インプットを多くしないとアウトプットばかりだと枯渇しちゃうし、ヤバいのでまずは読書を。そのためにソロキャンプや旅行や仕事も頑張らないとなりません。なーむー。