恐れていたことが起きてしまった。
文書で退団の意思表示
fcバルセロナのメッシが、退団の意思表示を正式にしたらしい。これには焦った。
どうせ残るんでしょ?
と誰もが思っていたからだ。
これまでも何度かあった。うまくいかなくなった時に。最近で記憶に新しいのは、ティト・ビラノバが病気療養中の病室に行ってメッシは言った。
やめるよ、ミスター
そして、ビラノバは答えた。
君はここですべてを手に入れただろう? ここが君のすべてじゃないのか?
そして、メッシは残った。そして、残ってよかった、と思ったんじゃないかな。だって、
- メッシ
- スアレス
- ネイマール
の三人で爆発的に点を取りまくった「MSN」はその後の話。ルイス・エンリケが「自分のやりたいこと」を脇において、「勝つこと」を優先して前線頼みのサッカーに切り替えた苦渋の選択の末の事。
そして、これは悪いことではない。もちろん、クライフイズムをないがしろにするのはペップが築いたものをなかったことにしちゃうようなものなので、残念ではある。
でも、そうやった方が勝てるんだからいーじゃねぇか?というのが選手もファン(クレ)も思ったよね。
で、その後「まさかの」ネイマールをとられる問題が生じて、それにより、それまであまり上がれていなかったジョルディ・アルバがガンガン左サイドを駆け上がれるようになり(ネイマールがいなくなって一番喜んだのはこの人だと思う)、天才ダニエウ・アウベスのいない右サイドの頼りなさを補ってあまりある活躍をしはじめた。
そして、なんだかんだ、メッシと親友のルイス・スアレスがいたので前線は猛烈に強いままだ。ネイマールの穴はコウチーニョにも埋められず、デンベレも頼りにならず、うーんうーんと出そうで出ないうんちにトイレの中で悶々とするような時間が粛々と過ぎていったが、それでもまぁリーガを勝てていたので、
まいっか
となっていた。
CLでの三年連続の惨めな敗退
だが、やはり、ローマに敗れた格好悪い大逆転負け、去年のリバポー相手にぼーっとしていた間にコーナーキックから点を取られる「CLにあってはいけない場面」を作ってしまった事、そして今年の「2-8」のバイエルン相手の敗戦。
この上なく、世界中に三年連続で「恥」をさらした王者のチーム。ファンとしてこんなに悲しいCLが続くとは泣けてくる。CLそのものを嫌いになりつつあったものね。
大三元振り込んだ次局に四暗刻単騎待ち振り込み、その次局についに「(純正)九連宝燈」一三面待ちを振り込んだようなもんですな。
それに嫌気がさしているのはもちろんわかるし、負けず嫌いのメッシがそれを「まーしょーがねーな」と寛容に受け止める訳がない。
スアレスへの非礼
あげくの果てに、ルイス・スアレスが戦力外通告された。しかも、その発表が、のび太ことバルトメウ会長の記者会見。つまり影口たたかれた。直接言われず、スアレスは怒っていた。
どうして直接言わないんだ!
それはそうだ。そして、新しい監督(悪名高き)クーマンから電話でスアレスは戦力外通告された。そういった事情をすべてひっくるめて、メッシは
やめよう
と思ったんじゃないかな。
契約の問題
だが、ここにきて、また問題が。メッシは、6月に「やめます」と言えばやめられるという条件がついている。その代わり、いつまででも契約していい!みたいな特別枠になってるはず。チャビがそうじゃなかったので、イニエスタから「レジェンドには自分でやめどきを選べるシステム」になった(といってもチャビ、イニエスタ、メッシ、ブスケツぐらいだと思うけど)。
そういうことでいえば、シーズンが終わった直後に「やめます」とメッシが言うのはアリのはずなのだが、契約そのものだと「6月」となってる。しかし、今年はコロナで8月にシーズンが終わった。なので、メッシとしては、冗談じゃない。6月っていうのはいわゆるシーズンが終わった直後ってことでしょ?8月までシーズンだったじゃねぇかよ!だろうし、チームとしてはメッシを手放したくないので、「契約不履行」として、お金をメッシから回収したいという訳。
これは、ネイマールと裁判でお金の事を争いながらも「うちへ戻らないか?」を画策する二面性と通じるものがあるね。
引き受けられるチームは二つ
パリサンジェルマンとマンチェスターシティぐらいじゃないか。イタリアは全部金がねぇ。潤沢な予算を抱えるのは、この2チームだけ(実はレアルマドリーってのもあるけど、フィーゴみたいなことをメッシがする訳もないのでオファーさえしないはず。でもマドリー監督の「ジダン」が「うん、来てほしいなぁ」と言い出したら笑っちゃうけどね。)
パリサンジェルマンにいけば?
パリにいったとすれば、ネイマールと再会できる。バルサは金がないので、ネイマールを買い戻せないでここまできた。でも向こうには金があるので、メッシを買い取る方がメッシ&ネイマールのホットラインを復活させるには現実的。なんなら、スアレスも引き取ってPSGで「MSN」復活しちゃいましょうか?てなもんだ。
マンチェスターシティにいけば?
そうなると、デブライネと猛烈に面白いサッカーを展開するだろう。日本を12秒で地獄にたたき落としたあのベルギーのカウンターのように、わーっと駆け上がる反撃ののろしはとても楽しそう。そして、何より「恩師ペップ・グアルディオラ」が監督だ。再会する師弟関係。それは興味深い。そして、アルゼンチン選手仲間のアグエロもいる。喘ぐエロじゃないです、アグエロです。・・・いや、待てよ。プレミアのあの速度に「お散歩メッシ」が追いついていけるとは思えない。ガーッと全員が駆け上がる中で、一人だけもたもた後ろから走っていくのを見るのはつらいな。うん、シティはやめておいた方がよさそうだ。
神戸に来る説
日本のようなチームに行って、別なスポーツのようにサッカーを楽しむ事にする、という踏ん切りの付け方もメッシならあるのかもしれない!と当然日本のメディアは騒いでいるけど、それはまだないんじゃないかなぁ。
メッシは、アルゼンチンに戻ると俺は思っている。だって、母国に何もできていないということをかなり気にしていると思う。コパアメリカで準優勝を何度も経験し、ワールドカップでも戴冠までは至らない。あげくに、自国アルゼンチンで
このスペイン人めがっ!
と罵られている。そういった事を本人がまるで気にしていないとは思えず。アルゼンチンに来ないで「神戸っ?!」ってことはないと思うなぁ。いくらイニエスタがいるとはいえ(長くはいないだろうし)。
本気だということ
一つはっきりしているのは、これは「だだをこねて」いるのではなく、本気にやめることを考えている、ということ。
本気で、今のフロントの考え方に嫌気がさしまくっているということ。蓄積されたイライラがついにバーストした、ということ。考えればメッシはたくさん我慢してきた。
- アルトゥール・メロを予算ぐりのために放出するたわけ
- バルベルデを途中解任したのに、来たのがセティエン
- セティエンの腹心のサラビアコーチが選手に嫌われまくっている
- 黒子に徹してくれた天才ラキティッチを売りたいからと、監督に圧力をかけて起用させない作戦に出た時の怒り
- 選手の交代のタイミングが不可思議でそれによって負けてたリーガ
- ついに今年は「無冠」
- なのに新型コロナの影響で泣きを入れてきたフロントに選手たちは「給料減額」を心地よく受け入れている。
- ネイマールを取るために金が必要ならば、僕らは給金の後払いに応じるよ、と高給取りのピケたちと一緒にネイマール獲得のお手伝いを協力的に買って出たのに、獲得できずにいる。
- 一度断ったグリーズマンが来たりしてる
- 今回も問題勃発しすぎているのに、会長は辞めずに監督変えて茶を濁す
- アビダルの辞任を止めなかった
これらが蓄積してるので「もう我慢の限界です」ということのようだ。衝動的な事ではないようで。
その証拠に、クーマン新監督と二人でメッシがあった時に
「中の事よりも外へ目を向けている」
と明言していたそうな。これはビビったけど、でも、クーマンのリクエストに即座に応じて休日返上して、すっとんで話し合いに来てくれたので、「前向きか?!」と思ったんだが、そうではなかったらしい。
内容証明のようなもの
burofaxというもので送信されたメッシの「退団の意思表示」文書だが、これは、スペインでのビジネス文書としてはおなじみのものらしく、日本で言う所の「内容証明」のようなものらしい。つまり、本気中の本気ってこと。
穿つとブックという見方もある
穿っているクレもいる。
すべては、メッシを退団させるためにフロントが演じている説。スアレスに敬意の欠いた退団勧告をして親友メッシを怒らせ、自分からやめていってもらいたい、というもの。メッシをクビにはしづらい。でも、自分からいなくなってくれれば、「お金」が入るので、その方が新チーム構築には「いいんじゃね?」というなんとも悲しい物語をまことしやかに信じている人もいる。
あり得ない話ではない。前述の「レジェンドは自分でいつ退くのかを決めていい」問題というのは、フロントの財政を考えれば諸刃の剣。イニエスタのように美しく早々に引き上げてくれれば、助かるけど(ほんと、イニエスタってすごいバルサ愛)、長く居座られたら、高額メッシはお荷物にしかならない。何人分の給料を渡すのか?を考えると補強もできない悪循環。
クーマンは何しろ、デヨングをピボーテで使うようだし、グリーズマンをセンターフォワードに持ってくる。そして、ビダル、ラキティッチ、スアレスを放出して新生バルサを作るそうな。
でも、前線でまるで守備をしないメッシとスアレスの「お散歩フォワード」が何しろいやでいやで仕方ないんじゃないかなぁ?という気もする。
これだけでかいショッキングニュースだと、俺までこうして穿ちが止まらない。
小澤一郎さんの言う通り
小澤一郎さんは、YouTubeとかでいろいろ語ってくれるのでとてもありがたい。そしてその小澤さんが、スアレスへの不敬等を見るにつけ、
フロントがそんな態度なら、こっちはこっちで紙切れ一枚(burofax)で伝えるよ
というのも納得できる。とおっしゃってた。その通り。
どうやら、2-8の惨敗のCLの試合がメッシのバルサでのラストゲームになるようだ。去年の10月に番組休んでまでカンプノウにバルサの試合を観に行っておいて、
本当によかったです!
ちなみに今回の敗戦で辞任したアビダルは、かつてバルサのDFだった。肝臓摘出手術をしてから復帰してファンを大感動させた人。そしてその時の優勝時に「トロフィーを掲げるのをアビダルにやらせる」という粋な計らいをしたのは今でも忘れない。
そして、その翌年に残酷な事に、アビダルは戦力外通告となる。その時の非情さもスポーツの現実も噛みしめた切ない気持ちも忘れない。ビタミン谷の「座長動静」でこんな感じで書いていましたとさ。