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「茶の本」岡倉天心

五浦海岸に行き、再建した六角堂を見て、キュンとする週末。

岡倉天心は茶目っ気のあるカオ

都落ちの五浦海岸か

宮川賢MTの取材で北茨城の五浦海岸に赴いた。とても綺麗な海であります。そこに六角堂というものがあり、思想家の岡倉天心の茶室だ。そこで思索にふけっていたそうな。

東京芸大の創始者であり、日本にとどまらず、「アジア」の文化風習を欧州に広めようと努めた人だ。

不倫関係でしょーもない事になったりしたのは、MTの番組の方で聞いて貰えれば解るのですが、ここでは、岡倉天心の数少ない書の中から代表作「茶の本」について。

茶の本

岩波文庫で出ていたので、即時ポチってしまったよ。短いのですぐ読み終える。そして面白い。

茶の専門書のように思えるが、そうではない。人生哲学であり、欧州へ向けてのアジアの魅力を伝えようとする気概が強い。

内容

茶室や茶道具がいかに色あせて見えてるすべての物が全く清潔である。部屋の最も暗いすみにさえ塵一本も見られない。もしあるようならばその主人は茶人とはいわれないのである。茶人に第一必要な条件の一は掃き、ふき清め、洗うことに関する知識である、払い清めるには術を要するから。金属細工はオランダの主婦のように無遠慮にやっきとなってはたいてはならない。花瓶からしたたる水はぬぐい去るを要しない、それは露を連想させ、涼味を覚えさせるから。

茶の本

読んで見ると、茶道というものが、如何に精神的なものであるか、そして、その「茶を飲む」という行為が如何に生活に必要で、美しい行為であったか。そしてその内容の意味することが精神世界に響き渡る事ばかり、を理解することになる。

岡倉天心のエッセイのような思想書のような、素敵な本。欧米への敵対心が強くてプリティ。

英訳本

もともと、この「茶の本」は「The Book of Tea」という英語で国外向けに出版された本であります。それを日本人が「和訳」してこうなった。逆輸入みたいな感じね。

それを理解した上で読むと猛烈に面白い。あなた方白人は、なんて言ってたりしてね。

わが国で人気ある劇の中には、有名な傑作の喪失回復に基づいて書いたものが多い。たとえば、ある劇にこういう話がある。細川侯の御殿には雪村の描いた有名な達磨があったが、その御殿が、守りの侍の怠慢から火災にかかった。侍は万事を賭して、この宝を救い出そうと決心して、燃える御殿に飛び入って、例の掛け物をつかんだ、が、見れば、はや、火炎にさえぎられて、のがれる道はなかったのである。彼は、ただその絵のことのみを心にかけて、剣をふっておのが肉を切り開き、裂いた袖に雪村を包んで、大きく開いた傷口にこれを突っ込んだ。火事はついにしずまった。煙る余燼の中に、半焼の死骸があった。その中に、火の災いをこうむらないで、例の宝物は納まっていた。実に身の毛のよだつ物語であるが、これによって、信頼を受けた侍の忠節はもちろんのこと、わが国人がいかに傑作品を重んじるかということが説明される。

茶の本

挿話がいちいち面白い。読み応えがある。この雪村の達磨の話も猛烈に面白い。

茶の本(岡倉天心)

利休の最後

本編のラストを飾るのは千利休のエピソードだ。

これまで言い伝えられている「秀吉が切腹を命じた」というのとは少々趣を異とする。今読むと新説とも思える。

そして、そこに至るまでの流れ。最期の茶会の様子。千利休が口を付けた茶碗を割った理由とは。

そういうことだったのか? と岡倉天心のこの本で頷くばかり。この本のトーン&マナーを知れば、これは「作り話として書かれていない」と思えるけれど。実際は解らない。

横山大観と下村観山

日本美術院を作ったものの、ワケあって(それがしょーもない)五浦海岸に引っ越す。その際、弟子のような立場の画家、横山大観と下村観山、さらにはその家族らも一緒に五浦海岸に引っ越した。

それは、都落ちと揶揄されたが、落ち着いて創作出来る環境が整っているので、的外れかもしれない。そして、その後の横山大観と下村観山の作品を見れば、五浦海岸だから生まれたのでは?と思えて仕方ない。

生々流転(横山大観)

生々流転は40メートルに及ぶ日本一長い画巻。見たいよねぇ。東京国立近代美術館にあるぜ!

2013年に映画にもなった「天心」

もともと別荘

もともと五浦海岸は、岡倉天心の別荘だった。それが色々あって、そこを本拠地とすることになる。リアス式海岸は景勝がすこぶる良く、その小さな岬の先に、六角堂という茶室を建てた。これがとても絵になるもので。311で流されたが再建された。有形文化財。見る価値あるぜ。

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感想(4件)

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作成者: 宮川賢

何しろ、インプットを多くしないとアウトプットばかりだと枯渇しちゃうし、ヤバいのでまずは読書を。そのためにソロキャンプや旅行や仕事も頑張らないとなりません。なーむー。