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天才ヨルゴス・ランティモス

最高に面白い映画に出会った。ヨルゴス・ランティモス作品がいちいち話題に上るのだけは知っていたけれど、見たのは初めて。こりゃハマる。

「籠の中の乙女」

見たのはそれほど新しい作品ではない。だが、この一作でヨルゴス・ランティモスが一躍有名になったという転機となった映画。

まず、そもそも、カメラワークが変。いちいちそういう所のこだわりがシビれる。

長男、そして姉妹

ファミリードラマと言ってしまえばそれだけで安っぽく有り体に聞こえがちだが、そんな言葉で表したくない。

カットンだ設定、そこに跪くリアリティ、俳優の魅力と絶妙な配役。徹底したシンプルさとなのにディテールのこだわり。熱いのに静かに見せる手管。素晴らしい。

タイトル通り「籠の中の乙女」の物語。

仕事をする父親だけが、家の敷地の外へ出るが、それ以外の家族は全員(妻、姉妹、長男)は敷地から外へは一歩も出ない。完全なる純粋培養された子供たち。なのに成人してる。一人は巨乳だったり。

その長男も、姉妹も、親に偏向した教育を施されたっぽい「顔つき」のホントに良い役者さんたちで。この役者たちを見つけた時点で監督は勝利を確信したことでしょう。

二枚目なのに、いまいちピンと来ないイケメン長男。
美女なのに、社会勉強がまるきり足りない顔立ちの姉妹。

そして、家族を執拗なまでに守ろうとする父親。子供たちに圧政を敷いて外へ出させない徹底教育を施す。このインプリントがハンパなく、それがコミカルで狂気で。

爆笑し続けた僕

何しろ僕の好みのタイプの映画で。爆笑し続けてました。見てる最中。

敷地の中から「見えるもの」以外は、ある意味存在しないに等しい、長男と姉妹。だが、家族以外の人間がこの家に来たことをきっかけに、ずれが生じてくる。

つまり、とてもシュールな構成のように見えつつも、ストーリーの転がし方は、とても王道を行く。

  1. 設定ありき。
  2. いつもと違う事が起こる。
  3. それにより微妙な変化を来す。
  4. 拗れていき調和が乱れる。
  5. そして……。

という、綺麗な起承転結さえある。なので、ぐいぐい引き込まれ、ワケわかんない世界観なのに、ぐいぐい引き込まれ毒に侵されていく自分が解る(その気持ち良さ!)。

純粋な子供たち(でも年齢は大人)

父母の結婚記念日を祝う演奏とダンスが抱腹絶倒で!
しかもシツコイので腹が痛くて仕方ない。爆笑に次ぐ爆笑で。

籠の中の乙女というタイトル通り

「籠の中の乙女」という邦題どおり、女性の自立で串刺しにされている物語でもある。
お父さんを一人称に見れば、偏狂的に守ろうとしている家庭とその破綻だが、姉妹視点だと、免疫がない状態で外界の人と触れ合うことで自我に目覚め途絶された環境からの解放へと気持ちがスライドしていく。

心酔しちゃった。面白すぎて。こういうのって、作者の意図が見えると「いわゆるブラックユーモア」なんて感じに受け止めちゃうけど、そんな事にはならない迫力がある。発言すべてにリアリティがあり、「事実の記録」にしか見えない。登場人物全員が面白い。ああ、見て良かったっ! イプセンの「人形の家」みたいな?なんて思って見るとドエライ目に遭います。

籠の中の乙女(字幕版)

ラジオの生放送しなくなったから、こういった過去の作品を堂々と後ろめたさなく鑑賞出来るのがとても嬉しい。ホントに嬉しい。見たい古い映画よりも観たくない最新映画を中心に見たり、読書したりしていたので、フリーダム万歳!

トークライブやります。
「大塚カル~クAfternoon~春の再確認~」
2021年3月14日(日)15時開演/大塚レ・サマースタジオ/ビタ店(http://v-mise.com)にて前売り中/3000円(税込)/出演:石川よしひろと宮川賢

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作成者: 宮川賢

何しろ、インプットを多くしないとアウトプットばかりだと枯渇しちゃうし、ヤバいのでまずは読書を。そのためにソロキャンプや旅行や仕事も頑張らないとなりません。なーむー。