秘かに開催されている、『悪趣味クラブ』。
悪趣味の限りを語り合う禁断の会合で、
今宵俎上に上がったのは“とある美少女”。
世にもおぞましい悪食晩餐会が、今はじまる
諸星大二郎劇場の第三集
漫画家生活50年の諸星大二郎の「諸星大二郎劇場第三集」が「美少女を食べる」です。奇々怪々な短編のオムニバス。短編だから、濃密です。一気読みするのが勿体ない。一話読んだら、その日はおしまいにして、翌日までとっておきたい、そんな漫画。
鳥の宿
舌切り雀がモチーフ。

最初に収録されている「鳥の宿」。
舌切り雀も、諸星大二郎の手にかかると、ここまでメルヘンに。
月童(ユエトン)/星童(シントン)
二話連続の同じ登場人物の物語。濃い。中国。色々な要素がてんこ盛り。
買われてご主人様のところへ来た「人形」と「その人形使い」。だが、両者は酷似していて、主人も見分けがつかない。
そのうち、入れ替わっているようにも思えたり、実際に中身だけが入れ替わっていたり。
だが、片方は間違いなく「人形」なので、壊れてしまうこともある。そして、その人形に恋をしてしまう人。



怖いし面白いし。さすがです。
美少女を食べる
タイトルが凄い。表紙カバーにもなっている。

悪趣味の限りを「語り合う」謎の会合で、「美少女を食べる」というイベントが催された。
お金持ちが集まって、悪趣味を展開する恒例のイベントの中で、今回は「美少女を食べる」となったワケだ。

食べる美少女の写真が紹介される。
そして、食べる体の部位の説明があって……。

謎の手紙が届いて、不気味な気分になる登場人物がいたり。
まぁ、何しろ、熟練の技。
この手の「気色悪いけど面白い」話はお手の物の作者ですからして。
今もこういう漫画家先生が存在しているというのが本当に嬉しい。我々も楽しめる。
他にも名作ばかり
アームレス。

タイムマシンとぼく。

俺が増える

漫画だからこそできる事
演劇を作っていると、演劇でないとできない事を作らないと意味がない、と思う事が若い頃から強くあって。勿論、だからこそ、「新劇」なるものをさげすむ形でアングラであったり色々な動きがあったよね。それらはとても興味深い流れ。勿論、歌舞伎とかしかない時代から考えれば新劇も画期的だったんだけどさ。
でも、今となっては、映画もテレビドラマも沢山あるので、そうなると、それらではできない世界を、それらを見ている人たちを面白がらせる事なんか考えないで、作品を作るべきだし、それを許されているのが演劇で。
でも、作る上で、どうしても敵わない問題が沢山あってね。役者の数が限られている。着替えの時間を計算しないとならない。上手にはけたのに、直後に下手から登場させられない。小道具がこんなの作れない?!とかね。
でも、演劇の凄いのは、役者の目の動き一つで、そこを宇宙にもできるし、人の胃袋の中にもできる。つまり具象であって抽象にもできるので、このあたりの強靱な枠組みを観客には楽しんで欲しい。
そんな中、漫画となると、もはや映画でできない事でさえできてしまう!
それが羨ましい反面「何でもできる分だけ、本当に面白いものにしないとね」というプレッシャーもハンパではないでしょう。
だって、登場人物を演じる俳優がいないのだから、その俳優の事務所から「もう少し美味しくなりませんか?」なんて文句言われる事もないし、「下ネタ台詞を言わさないでもらっていいですか?」とか「売り出し中なんで、髪は切れません」とか言われて「うーんうーん」と唸らなくていいわけでしょ。
自由に、姿形を変えて描けばいいワケですよね。巨乳ちゃんにもできれば、八頭身にもできる。そして、「俺が増える」のように、全く同じ顔の登場人物をどんどん増やせるワケです。すんごい素敵。
そして、その漫画が持つ力を存分に使って描いている人って意外と少ない気がする
諸星大二郎先生もその数少ない巨匠の1人。創作50年って本当に凄いよね。僕、覚えてますもの。小学校入ったか入らないかのあたりに、諸星大二郎がジャンプでデビューしていたのを。「なんだこれ?」って子供心に「怖い世界と絵」にビビってた記憶。どうして、こんなおっかない不気味な絵の漫画家が受賞するのだ?ってね。
でも、その理由は大人になってすぐ分かった。そしてそれは漫画ファンみんなが知る事となり。
個人的に思うのは、自分がこれまで作ってきた話の決着の付け方に、自分で飽きてしまい、もしくは「これはあの作品でもやった手法になりそうだなぁ」みたいな事に縛られて、この先生でないと許されない終わらせ方をバリエーションとして手中に収めた感がある。それも微笑ましいし、まだ進化を止めないというのも見て取れシビれる。
こういう「貫いている」作り手が大好きだし、リスペクト。
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