これは悲しい人生です。虐殺に加担させられて、その挙げ句に殺される、そんな人生ほど悔しく悲しい事はないでしょう。
だが、もっと悲しいと言えるかもしれないのは、その挙げ句に殺される所をすんでの所で逃げおおせて生きながらえるその後の人生かもしれない。
ゾンダーコマンド
ゾンダーコマンドというのは、アウシュビッツで、ユダヤ人でありながら、大量虐殺に加担させられた人たちのことだ。この任務は強烈だ。
ユダヤ人を「シャワーを浴びると嘘をついて(何も知らないふりをして)洋服を脱がせてガス室へ連れて行く」
そして、次に、チクロンBという殺虫剤が天井から出てきて、ユダヤ人たちは殺される。
遺体を燃やす。金歯を抜く。髪の毛を刈り取る。痕跡を消す為に燃やした死体の骨を砕く。1人あたり640グラム程の灰を川へ運び、流し捨てる。
そんな事をやらされていた「ゾンダーコマンド」。正式な記録はない。
NHKのNスペでやってました
Nスペプラス?かな。でやってた。丁寧に取材していて、こういうのを見る度に改めて「妙にバラエティとかも作れるようになりたい」とか思わなければ良いのに、とニュース得意なラジオ局に感じるような思いと同じような感覚になる。
記録はボトルメール
記録はまるでない。ナチスは敗戦濃厚になった時から証拠隠滅の為に、数多くの施設を破壊して回った。アウシュビッツのように少しだけ残ったものだけが頼りだ。
「ゾンダーコマンド」は手記を紙に書いて、瓶に詰めて、アウシュビッツの土のなかに埋めた。
しかし、それが見つかったのも、終戦後暫く立ってからだし、見つかったが、その瓶の中の手紙やメモがまるで読めない。
それが最近になってようやく、デジタル技術の進歩により、読めるようになったのだ!
イディッシュ語のアルファベット。当時、東ヨーロッパに住むユダヤ人が使っていた言葉で3人のゾンダーコマンドの存在がハッキリした。そしてNHKは調べまくる。いいぞ、NHK! 頑張れ! もうバラエティは作るな! チコちゃんさようなら!
それによりようやく色々判ってきたのです。
だが、ユダヤ人のゾンダーコマンドが元々住んでいたギリシャの町では、そのゾンダーコマンドの手記は公開されなかった。
みんな、生き延びたユダヤ人は、告発よりも、生活の人生の立て直しに必死だった。
つまり、宮城県や岩手県の人たちが、津波被害から立ち直ることに必死で、原発反対!とかある意味どーでもいい!というのと似てる。
ゾンダーコマンドの手記が書籍になったのは終戦後かなり後だった。
1人生き残ったゾンダーコマンド
1人生き残った人は地元に戻った。しかし、居場所はなかった。ユダヤ人が死んだ事により、ポーランドからの移民のユダヤ人墓地は解体され、墓石は建築資材として使われ、ユダヤ人が住んでいた家屋も他の人が住み、
この戻ったゾンダーコマンドのお店も他の人が経営していた。
まるで喜ばれない帰還だった。
裏切り者
そして、何より、大量虐殺に加担したという事で、恨まれている。裏切り者としてしか見られていない。
そう見る人の気持ちも分かる。
生き残ったゾンダーコマンドはアメリカに移住して結婚して幸せな人生を送った。(夜になるとおいおい泣く父親を見て不思議に思っていた娘サンのインタビューには泣けるけど)
世界が見捨てた
怖いのは、ポーランドがイギリス等に、このゾンダーコマンドからの情報を元にして、「大量虐殺の実態を暴いて、国際世論に訴えようとしている」にも関わらず、イギリスとアメリカが取った行動だ。
これを責めるとナチスは、ユダヤ人を自分たちの国に押しつけてくるかもしれない。それは困るよね。今でさえユダヤ人の移民に仕事を奪われたり、してるし。
ということで、黙殺したのだ。
つまり、加担していたのは、ゾンダーコマンドだけではなかった。という話。
ほんっと、ナチスドイツについては、まだまだ知らないことが沢山出てくる。