女川原発2号機について、宮城県議会は再稼働を容認する判断を示した。これは、「馬鹿じゃないの?」と呆れるべきなのか? それとも「ぶらぼーっ!」と快哉を叫ぶべきなのか?
東電と東北電力の違い
まず、福島原発は東京電力。で、女川原発は東北電力。つまり別会社。会社のやり方が「違う」ナリ。
それを僕が痛感したのは、女川原発のPRセンターをバイクで訪れた時のこと。そう、2年前の夏の事でした。
山の中をズーッと走り続けても、復興の為のトラックとしか行き違わない。(その経験が芝居「トラックと海」を書かせた)
突然、京極夏彦「魍魎の匣」の「ハコ」が飛び出した時の描写のようなドキリとする景色に遭遇する。山の中にまるでパラダイソのような素敵な近代的な建物があった。それがPRセンター。花壇がある。駐車場が広い。中に入るとバスガイドさんのような美人の若い女性がパンフレットをくれる。まるで竜宮城へたどり着いた浦島気分。
そして、中で見学をして、女川原発について勉強をする。団体客がお姉さんから説明を受けているのを一緒に聞かせて貰って、「へぇ」とうなったり。
そして展示されているいくつかのものを見ているうちに、あることに気づく。それは
女川原発は福島原発とは違うぜ
と言わんばかりの差別化の強調だ。
見れば見るほど、「女川原発がメルトダウンしなかった理由」とか「なぜ、持ちこたえられたのでしょうか?」などが説明される。
それは、「東電と一緒にしないでくれよ」という部分が見え隠れしてるように感じてしまった。
沢山パンフレットなどを貰って、東京に帰ってから調べてみたが。やはり女川原発はちゃんとしていた。というより「福島原発」がひどすぎた。ということが判った。ああ、行って良かった。女川原発は「自慢」しているのではないのだ。「東電と一緒にされる風評被害」という火の粉を払っているだけなのだ。だが、あまり声高には言いづらい。なぜなら日本全体が原発にアレルギー反応であることを熟知しているから。
しかし、PRセンターに来てくれた人にぐらいはそのあたりを訴えたい。そういう思いだったに違いない。
ここまで理解した僕は、今回の村井知事の「容認」は「げげげげっ!」とは思わないのだ。
強固なる女川原発
まず、この再稼働をしっかり理解する為に必要なのは、「原発はみな一緒」と決めつけない事だ。
原発は怖い。というより、原子力発電は必要ない(長い目で見れば)。しかし、もし今必要なのだとしたら、新規に建設するよりも再稼働の方がいい。そして再稼働するのならば、安全な原発がいい。というここまでは理解できる。よね?
で、ホントに大丈夫なのか? と自分でも調べてみた。村井知事の判断を追体験したかった。すると、あ、これなら「楽勝で大丈夫じゃね?」と思える要素がボロボロ出てきた。ふむ。これは興味深い。町田徹さんの調査から引用させて貰いまする。
基本設計がそもそも違う
基本設計について
チャンネルNipponアーカイブ
営業開始に先立つ16年前(1868)に学識者を交えた社内委員会を設置して過去の津波に関する文献調査を行った。結果として、当時の想定された津波の高さは3m程度だった。が、東北電力は原発の敷地の高さをほぼ5倍の14.8mに設定した。12mでも良いのではとの意見もあったが、当時の委員会のメンバーであった人物が15mにするよう主張し、その通りに決定された。津波の恐ろしさを知る彼は、貞観津波クラスに備えるべきと強く主張し、経営サイドも承認したのであった。
そして、幾重にも渡りバックアップされていた!!!
バックアップ
- 東北電力は、想定や現状の見直しとそれに応じた対策を何度も積み重ねてきた。想定津波の高さを3.1mから、貞観地震の実態確認後に9.1mに引き上げた。
- 敷地の高さは十分でも、津波の引き潮で堤防が削り取られることを防止するため、格子状にブロックを敷き詰める等の堤防の補強工事を行った。
- 電源の確保にも万全を期していた。通常高圧線網は4系統であるが、女川原発は5系統を備えていた。震災で4系統がダウンしたが、最後の1系統が正常に機能し続けた。
- 非常用のディーゼル発電機は、2号機の一部で停止したものの、他系統は正常で相互融通できる状態にあった。
細かい部分まで対策が施されている
- 原発の制御盤の前面に頑丈な手すりを設けて、激しい揺れの際に誤って操作ボタンを押さないようにした。
- 様々な配管の補強を一本の棒で支える方式から、3方向から支える仕組みに改善した。改善個所6,600ケ所。
- 4階建ての古い事務棟の3階までの外壁に鉄骨を張り付ける補強工事の実施。
読めば読むほど、もんのすごくちゃんとしているのが理解できる。やはり、東北電力の「地震」と「津波」に対する危機管理が強くて頼もしい。設計の段階から。それに比べて東京電力の福島原発は……。
福島原発は……
福島原発で津波の想定していた高さは、
- 福島第一原発では、5.7メートル
- 福島第二原発では、5.2メートル
だそうです。えぇ~。
片や避難所、片やメルトダウン
福島原発は、ご存じの通りメルトダウンして「fukushima50」の映画の通り、散々な目に遭った。今もその影響は色濃く、福島県の県民は東電の「テキトー」な部分で割食った部分とともにある。その電気を使う身としてなんだか申し訳なく感じさえする。
一方の宮城県の女川原発は、前述の通りちゃんとした設計で危機管理の意識が東電に比べたら雲泥の差で高いので、311の時には
女川原発を避難所として活用した
のでありまするよ。えー。マジっすかぁ。それってすげー。まぁ、福島原発後だったら「なんとなくイヤだから別の所に行きます~」って人もいたかもしれないけどね。
それじゃあ、女川原発のPRセンターが「一緒にしてくれるな」と言う雰囲気を醸しているのも納得できる。そりゃそうだ。俺だったら、もっともっと、違いをアピールしちゃうわよ。
客観的に見ると安全と言えるのか?
と。言うことは、だ。あの時、つまり311の折、福島原発事故により「原子力発電所=悪」という図式が確立されたものの、電力会社によって随分と差がある事がわかり。
事実だけを見てみると、
311で大丈夫だったのだから、少なくとも日本一安全な原発なのでは?
という風にも思える。この言い方に異論は勿論あるだろう。僕も行っててクビがすーすーしてくる。すー。すー。
その後も改善する女川原発
所長は、今回の震災でも足りないところが見つかったと述べ、補強内容等を説明した。その中には以前から順番に改修を進めていたものも含まれており、対応が遅れたと反省の弁を述べたという。
311後、女川原発は、それでも改善していた。
- 防潮堤を更に3.5mを17mに嵩上げ
- 新たな非常用の発電機を裏山の海抜60m地点に設置
- 重油タンクの設置場所の変更
- ボヤの原因となった1号機の高圧電源盤内の遮断機の設計変更
- 潮位計の取り付け個所のパッキンの補強等
天晴れです。つまり、ちゃんと懲りても居る。ほぼ、小火ぐらいで済んだ女川原発なのに(そんな軽い言い方するとまた叱られそうだが)、それでも「想定外だった」と考えている。想定外を想定していた東北電力なのに。
だが俺は反対だがね
勿論、僕は反対です。当事者じゃないから、それによって雇用が生まれるであったり、安全だったじゃないか、という事でオッケーにしていい話ではないと思うし、あくまで理想論と言われようとも、懲りてる。怖すぎる。
実際に、危機管理の為のバックアップ費用が格段に上乗せされてしまい、現在の「原発」は決して「コスパの良い発電」ではなくなっている。では、なぜ、今回再稼働なのか?
まずはCO2
福島原発事故で、いったん、フリーズしてしまった、温暖化対策が志半ばであります。
CO2を減らすとしたら、間違いなく、原子力発電がいい。それを使わなくても、頑張って再生可能エネルギーをガンガンやり始めればいいじゃないか!と人は言うけれど、時間がかかるし、すぐに原発で発電していた分の全てを再エネでまかなう!というのは難しい。
それは勿論、電力会社が元締めとなり続ける、形だけの「電力自由化」により、自由競争とはほど遠いやり口で電気業界への参入を敷居高くされちゃってる「既得権益者」のやりたい放題もある。
そして、それにより、「となると炭素だね」と化石燃料を増やすってのも、もはや時代から完全に逆行している愚行。とはいえ、アメリカみたいにシェールガスを掘り当てろ!なんて事に着手する余裕なんかあるわけもなく。実際無理っぽいし。
洋上風力はよさげだよ!と日本では近年、大注目の再エネ「洋上風力」だが、イギリスが頑張っているのは、もともと北海油田の人員や基地があるために、それを利用して洋上風力発電に移行しやすかったからであり、
日本のように「遠浅」でもなく、イギリス等の北海油田のようなリハーサルもなされていないゼロからのスタートで洋上風力となると、これまた難しい。今、盛り上がっているけど、当面の電力需要をまかなうなんて夢のまた夢。
となると、もはや、原発再稼働が一番の近道であるワケです(書いてて悲しい)。
日本は、いつまでも石油とかに頼っているので、ついに国際社会から馬鹿にされる意味での「化石賞」なるものを授与された。これは「fukushimaを経験したのに君たち馬鹿なの?」と言われているに等しい。
宮城県民の判断は?
宮城の各自治体の長はどういう反応をするのだろう。女川の人たちはどう思っているのだろう。これから審判が下される。
僕の印象
いよいよ来年で311から十年。
僕の印象だと、宮城や岩手の人たちは「津波」アレルギーが強いが、「原発事故」は対岸の火事のような受け止め方。
これは、福島以外の被災地とその他の都道府県の温度差が顕著に表れている部分だと思う。東京も、西日本も「原発事故」に対しての興味はずっと深く未だに監視し続ける気持ちでいるが、宮城や岩手の方々は、「福島原発事故」に対してはそれほど問題意識を持っていないように受け止められる。勿論それは、(何度もラジオで言ってきた通り)それどころではないから、なのだと思うけれど。
今回、改めて、原発について勉強会を開いているようだけれど、そこで説得されることなく「やはり嫌なものはイヤ!」という感情的な意見でもいいので、ちゃんと宮城の人たちが、女川の人たちが、あとあと後悔しないような形で声をあげるのを望むでござります。
シンプルに彼が好き
まぁ単純な事を言うと、村井県知事に好印象なのです。僕は。
漁業の株式会社化とか、原発再稼働とか、何かと「判断」をしなければならないのは司る者の運命であり、仕事。嫌われなければならない。
それなのに、村井県知事は、温厚で寄り添いながら次々に手をつけていく。そういう印象があるのよね。河北新報を毎日読んでいるワケではないので、「買いかぶりすぎだっ!」と言う人がいるかもしれないけれど。
僕が個人的に宮城で話しを聞いた人は一様に「頑張っていて好きですよ」と村井知事に好印象だった。泊まった民宿のおばあさんも、国分町で話しかけてきたポン引きも、酔っ払ってた女性も。(仕事仲間の東北放送の人には訊いていない)
何が言いたいかというと、信頼している人が犯したミスなら、信頼できない人によるミスより後悔が少ないでしょう。そもそも、再稼働容認がミスかどうかがハッキリする時が来るのかどうかも判らないしね。
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