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自己顕示欲を満たしやすい今は、少年少女が夢を見られず哀れ哉

恵まれているようでそれでいて、悲しいのが現代若人。と感じることが多い最近。何でも手に入り、何でも可能になったような最近だけど、それは全てネットのおかげ。

一億総表現者

うらやましいと思う部分もあるのが、ネットね。自分はパソコン通信から少しずつ回線速度が上がっていくのと同時期に年齢を重ねていったので、熟成したネット社会での恩恵を享受できていたかというと疑問だけれど、ワケーシュは当たり前のようにその波に乗り続ける。

資料本が不要

まず書籍を買う必要がないでしょ。映画の名台詞を調べよう、となれば、書籍を沢山購入しなければならなかった。和田誠の「お楽しみはこれからだ」は当然全巻そろえ、その他のそういった書籍は見つけたら買いあさる。お金かかるね。

お楽しみはこれからだ〈PART6〉映画の名セリフ

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でも、バブルの頃だから、放送作家のギャラも猛烈に高値なので、貰う額の半分以上を資料に割ける。という側面もあるにはある。

それにしても、今はグーグル先生に訊けば一発解決。ホント便利だよね。

何でも見られる(オンデマンド)

何でも見られるよね。欲しいものが全て。違法アップロードも含めて、すぐに動画配信サイトでアップされる。オンデマンドでならば(つまり生中継でなくていいなら)何でも手に入る。

僕は30代の頃は、FCバルセロナの試合でどうしても中継しないのとかがあって、泣きそうだったもの。それが今は全て見られるし、今朝のプレシーズンマッチも詳細がすぐにわかる。ありがたや。

すぐに表現者側に回れる

そして、やはりユーチューバーになる為の敷居がとても低いので、誰でも「今日から」タレントです。明日にはスターになってますね。

未だにユーチューバーの事を上から目線で見ているタレントがいるのはテレビの未来は暗いなぁと感じざるを得ないけれど。

以前ならば、

上京しないと有名人にはなれない

だったのに、今は、どこでも誰でもいい。もちろん、有名人にならなくても、それなりの表現者気分はすぐにでも味わえる。

ポッドキャストで配信すれば誰でもラジオパーソナリティを気取れるし、実際に面白い人も沢山いる。事実、ポッドキャストで評価されてラジオ番組のレギュラーを持つ人もいる。

つまりこれにて多くの人が自己顕示欲を不必要に満たせる時代に突入したと言える。誰でも仕事のあとにブログを書いて、人気ブロガーになれるし、コミュ障だからってユーチューバーになって必死になれば、そこそこ収入を得られる可能性がある。

完全に「一億総タレント時代」ですね。

だが、少年少女は夢を見られない。

それについて、僕は、羨ましいと思う反面、同情も禁じ得ない。

タレントさんは出たい!と言う気持ちが猛烈に強い人の集団であり、仕事のえり好みをしないでスタートした方が得だ。

なので、テレビタレントを目指すのであれば、それは従来の夢として成立するかもしれないが、現況の表現者側に回る事の敷居の低さを利用した場合は、夢を見づらくなっているようにも思え。

なぜかと言えば、ユーチューバーにしても、何にしても「結果がすぐに出てしまう」からだ。自分が「向いているのかいないのか」がすぐに判る。ということは、

宝くじを購入してから「当選発表」までの間の期間が猛烈に短い事になる。

まるでわくわくしない、できない。

かつての少年少女は、歌手になりたい!と思えば、レッスンを積んで、頑張って、歌が上手くなって、それを認められて、とあるレコード会社の人に紹介して貰って、仮契約にいたって、コンセプトから何から相談して、時期を見てデビューに向けて準備を進め、なんて事を夢みて、4年でも15年でも25年でも「レッスン」して待ち続ける事ができた。

しかし、今は、「あ、もう無理だ」と結果が即に出てしまう為、

夢を見る期間がない

のではないかと。

セルフプロデューサー

もちろん、その代わり、自分で自分を演出する必要もあるし、いろんな事ができるようになった方がいい。

映像編集、波形編集、タイトルロゴをイラレで作って、テロップ入れ。つまりPCが使いこなせないとならないし、ブロードバンド環境は必須だね。DTMソフトで作曲して伴奏も作って、歌えない人でも初音ミクに歌わせてシンガーを募ればプロデューサーにもすぐになれる。

やることが増えている分、大変だなぁという見方もあるけれど、
他者(いわゆる大人)の顔色をうかがったり、キーパーソンに好かれないとならないなどといった面倒な事は必要ない。

歌手であれば、レコード会社に好かれなきゃね、
俳優であれば、ドラマ監督に評価されなきゃね、
お笑いタレントも、バラエティ班に評価されなきゃね、

とかそういうのが要らない。サザンオールスターズのように、ボサノバだった「勝手にシンドバッド」を

「のりのりにしろや」

と言われることもなく、チェッカーズのように

「チェックの服着ろや」

と言われることもない。やりたいことだけをやればいいし、自分を殺さずに、表現ができる恵まれた環境にあることは間違いない。でも、

夢を見る期間は短い。

宝くじって、当たれば嬉しいけれど、当たるまでのわくわくにお金を払っている部分が大きいと自分は思っている。つまり、夢は結果が出るまでが楽しいのであって、早く結果が欲しい訳ではない。今は、思い立ったらすぐ結果が出るので、夢ってものは寝ている間にしか見ないものになっちゃってるようで。

作品の数も莫大。

そして、それにより、小説も莫大な数があり、楽曲も死ぬほど多く存在し手に入る、無料で聞ける。漫画も。お笑いの演目も。

その分、それらを嗅ぎ分けて、「自分好み」の作品を抽出する技術に長ける必要がある。
それでも、僕の父親が「ほかに娯楽がないから、映画は公開されるものすべてを見ていた」という作品の少なさを思えば贅沢だ。

これからは、
武者小路実篤「友情」を読まずに大人になる人や、ビートルズを聴いたことがないまま大人になる人や、手塚治虫の漫画を読んだこともなく大人になる人が、当たり前になる。既に今、もうなってるね。

少し前の赤塚不二夫ブームは赤塚ファミリーが仕掛けた。赤塚不二夫を忘れ去られないように、が目的だ。だが、すぐに忘れられてしまうだろうし、それでいい。テレビタレントの代謝だけは遅いけど、作品の代謝は早くていい。沢山のデータがあるから、藤井聡太のような人が出てくる訳だし、沢山の作品があるのだから、新しい作品の方が「面白い」に決まっているからね。

相対的な面白さは無理か?

ただ、全体のクオリティレベルが上がっている為に「抜きん出て面白い」ものに出会えるチャンスは激減しているのかもしれない。刺激過多により、大抵の事に「面白い」と感じなくなっている。テレビのバラエティではタレントを玩具のようにドッキリで脅かしてその反応を見て楽しむものがとても多く、YouTubeも、無茶な事をやらないとならない。

テレビタレントは群雄割拠の様相を呈しているから、タモリさんのような突然変異は絶対に現れない。あんな人が現れても、「何しろ使ってみようぜ」にならずにすぐに好感度調査でじり貧だから会議でNGとなっちまう。

つまりマーケティングを常識化したことで、小さくまとまっちまったのか?
でも、若い子全員が記念受験のように一度アイドルやってみるってのも不思議な世の中だし、本気じゃないのにお笑い養成所に通う若者が多いのも苦笑いしか出ないけど時代を表している。

ともあれ、アダルトビデオ女優や性風俗嬢も上品な別嬪さんが多く、日本のお笑いタレントのコントは演劇以上に進化し続ける。全てが「上質」になり過ぎている為に、図抜けて面白い作品に出会うのは難しい状況だね。

だって、周りにあるもの全てが面白いんだからね。なので、今の世の中の作品の楽しみ方のコツは、敢えて「しょーもなくつまらないものを味わう」事によって「相対的な面白さ」を感じられるようにしよう!が正しい気がする。嘘だけど。

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作成者: 宮川賢

何しろ、インプットを多くしないとアウトプットばかりだと枯渇しちゃうし、ヤバいのでまずは読書を。そのためにソロキャンプや旅行や仕事も頑張らないとなりません。なーむー。