親が高齢になると病院に行く機会が増えますね。
当日の予約は出来ません
それは、親の代わりに治療費を払いに行くというのもあるし、親の病状について治療方針を打ち合わせに行く、というのもある。
そんな中、頻度が上がったからというのでもなく、自分が年を取って頑固になったからというのでもなく、病院の情報の連携が首尾よくいっていない事を感じて、多少モヤモヤする機会も同様に増えてきた。
なんかね、面会については前以て電話して予約をしてくださいと言われていたので、当日の朝に、「本日午後に見舞いに行きたい」と告げると「当日の予約は出来ません」と言われる。では明後日の面会を予約お願いします、と言うと、「一週間に一度に限りますので、昨日弟さんが見舞いに来たので、駄目です」と言われてしまう。
ええと、それ、面会についての説明の段階では言われていない事であり、その説明の時に貰った紙にも書かれていない事なのですけれど?
マニュアルの意味・無意味
となると、その「紙」はもはや意味がないし、でも、それを配る事で「伝えた」という事実を作った事になっているのであろう。
で、「あ、はい」と腑に落ちぬまま電話を一旦切って、また一週間後ぐらいの自分のスケジュールが出たら連絡しようと引き下がると、しばらくして、病院から電話がかかってくる。
先日弟さんがお見舞いに来た時に、メロンを持ってきたのですが、今、患者はカリウムを多く摂れないので、メロンは食べさせられないんです。引き取りに来て貰えますか? とな。
え? それは弟がメロンを渡した時点で言って貰えれば、そんなことをしなくても良いのでは? と思いつつも、僕は、ここでもグッと我慢をして……

テレビカード?
なぜならやはり、コロナ渦で散々シンドイ思いをした医療従事者に対するリスペクトを忘れていないし常々の感謝の気持ちを失っていないからであります
……解りました、取りに行きます、というと、「それと、テレビカード(有料)の為に、弟さんから10000円をお預かりしたのですが、それも、前に預かった分の残り5000円があり、合算すると15000円となってしまうので、額が大きすぎるので、これもまた受け取りに来て欲しい、と。
あ。はぁ。え? それも、弟がテレビ大好きな母親の為に、カードがなくならないように渡したし、その際にも「お母様はテレビが好きなようなので、ある程度多めにカードのお金を預かっておいた方が良いと思います」と言われていたのだが?
しかも、受け取った時点で、「それは多いので数千円のお預かりに」と一部返金してくれれば良い話なのではないのだろうか?
なんだこりゃっ?!
メロンちゃん
いえいえ、でも、でも、そうです、医療従事者にはとても感謝しておりますし、自らの生命を賭けてパンデミックを防ごうと努力してくださった事に対する謝意は失せていない。なので、
あ、解りました。それも受け取りに行きますね。と告げ、仕事を抜け出して、その病院に向かう。
それは、弟は会社員なので、自分の方が自由がきくと思ったからで。で、病院にいくと、看護士さんが出てきて、こう言いました。
「メロンなんですが、お母様は食べられないので、引き取って頂いて宜しいですか?」
と。はい。え。はい。だから、それで来たんですけど。と言うと、
「あ、解りました。では、引き取って頂けるということで宜しいですね」
と言って、「少々お待ちください」とまた別の階に消えた。
え? あの、それの為に来たのに、何これ? と思ってまた10分待合室で待つ。とようやくメロンを持った看護士が来て、
「これがメロンです」「はい」
まぁこれは良いとして、こう言う。
「それと、テレビカードのお金を預かっているのですけれど、これはこのままこちらでお預かりしていて宜しいでしょうか?」
と訊いてきた。ええと、何を言ってらっしゃるので? ともはや意味が分からず。改めて、
「それはですね。そもそも、テレビが好きだから多めに預かっておいた方が良いと思います、と言われたので、渡したのですが、その後、それにしても多すぎる額なので、一部返金するから取りに来いと言われたので、来たのです。その上で、どうしますって訊かれてましても」とグッと(こちらが訊きたいぐらいだぜ)を堪えて、穏便に反応。すると、
あ。そうでしたか。解りました。もう少々お待ち頂けますか? 確認して参ります。
といって、また別の階に消えた。そしてまた10分後、戻ってきて「お母様はかなりテレビがお好きらしいので、カードの為のお金はお預かりした方がよいとは思いますが、額が大きいので、今回は5000円だけお預かりしておきますので、この10000円はお返しさせて頂いて宜しいですか?」とな。

連携、大事
僕は笑顔で言います「わかりましたっ!」とね。まぁ、そこから僕が弟の家にメロンや10000円を届けに行った事は言うまでもありませんが、
ご想像の通り、これで僕の半日は完全に潰れますよね。でも、誰が悪いワケでもありません。医療従事者には感謝しておりますから。仕方ないんです。
能力の低い看護士だっていないよりはいた方がいいのだし、連携がとれていない病院だってないよりはあった方がいいのです。
僕の想定だときっとこういう感じなのだろうな、と思うのです。
看護士も医師も、自分の目の前の患者への対応で一杯一杯で、面会のシステムをしっかり患者家族に伝える為のマニュアルを作るなんて仕事は、「誰の仕事でもない」のだ。それが「ちゃんと整っているマニュアルか」等ということは、誰もチェックしていないし、チェックする必要があるとも思っていないのだ。
つまり、誰かがやるだろう。直接患者家族と向き合う奴が考えれば良い話で、そんな些末な事なんざ、患者の治療をする上で大きな影響があるワケではないのだから、どうでも良い。面会の予約がとれようがとれなかろうが、それにより患者が悪くなることも良くなることもないのだから、患者家族に二度手間三度手間なんてカンケーねーぜ。
大きい病院だからかな?
ということなのかしらね。いや、そこまで悪意はないだろうけれど、そういう風に思えば、承服できようものですよ。
ちなみに、この病院でその後、入院する僕の母親は、テレビを見られずに過ごしていたそうです。面会の時に母に「テレビは見られているの?」と問うと、「それがねぇ、見られないのよ」と悲しそう。看護士さんに訊いたら「えっ?!」と慌てて、調べに行き、「あ、お金預かってたんですね! なんだ、じゃあテレビ見られるじゃないですかぁ。今からカード買ってきてあげますね!」と言っていた。うむうむ。
とはいえリスペクト
僕は君らを馬鹿軍団とは思いませんからね。コロナ渦で圧倒的な活躍をなさった医療従事者には感謝をしています。多少無責任な医療従事者でもいないよりはマシでしょうし、いてくれないと困る。
このコントのような状態が、ずっと続いていると思うと、もはや同情を禁じ得ない。僕らはイライラするぐらいで済むけど、患者の不安は? 働く人たちの「指針なき業務」に持ちづらいやる気のキープ。そこに関与しない医師たちの日常。
どんな現場にも誰かがやらねばならない事というのが沢山あるけど、それを本当に誰もやらないと、やはり立ちゆかない。自分の関与するプロジェクトでもそういったことを意識していこうと改めて思うのであります。
とはいえ、ホントに医療従事者には感謝していますし、これからもし続けますよ。
だって、こんな事をブログに書けるぐらい、新型コロナウイルスというものの恐怖が和らいでいるのだもの。それはひとえにそういった方々のおかげなのだものね。
