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「オリーヴ・キタリッジの生活」エリザベス・ストラウト

ハヤカワepi文庫。とても面白い。

オリーヴは性格の悪い女

ピューリッツァ賞を受賞。十年前の小説だけれど、ようやく読めた。ああ、面白かった。

オリーヴは元数学教師。小説の始まりでは四十代だが、最後の方には七十過ぎの老女になってる。
身長が無駄に大きくて、決して美人ではない。尚且つ性格が悪い。キツイ。コミュニケーションが上手い方ではない。ぶっきらぼうだが暖かい。子供を育てるのに失敗したと思っているけれど、それを気に病むそぶりは窺えず、嫌なモノは嫌とはねつける頑固者。

このキャラクターがとても素晴らしい。いるもの、こういう人。そして痛快なんだな。色々と。

で、小説の構成だけれど、十数話のオムニバスの短編小説だが全てに「オリーヴ」が登場する。

しかし、全編オリーヴが出てくる主役がオリーヴってものもあるクセに、ほんの少しだけチラとしか出てこないものもある。それが興味深い。何故主役がカメオ出演みたいに?! ってね。

でも、そのカメオが「意味深」カメオなので、逆に「おいしい」登場。

普通の生活

描かれる舞台は、アメリカの片田舎の架空の都市。ニューヨークにしか行ったことがない僕でも、なんとなく映画で観るカントリーサイドってヤツなんだろうと想像もつく。オリーヴは「ニューヨーク」は一度しか行ったことがない。そんな大都会。

夫のヘンリーは元薬剤師。薬局づとめ。夫婦は隠居していくが、大事な倅が結婚したり、その後離婚したり、オリーヴたちに内緒で再婚したり、色々ある。

変な事件に巻き込まれるし、解決しようにも難しい状況に陥ったり、色々。

しかも、オリーヴが主人公ではない短編では、その話の主人公等の登場人物がガッツリ「仕事」してる。良い仕事を。とりわけ後半に出てくる「犯人」なんてのは、面白くて仕方ない。

そして、無駄な形容がないのに、つまりオリーヴの性格そのもののように、ぶっきらぼうな文章に見えるが、その実、とても柔らかく暖かい。

終始、同じリズムでドンドン「構成」に変化が見えるので、長編の筈なのに、バンバン読み進められない。そんなことしちゃ勿体ない。概要を掴むような読み方をしていると、まるで楽しめない代わりに、しっかり読んで小説に浸るべき。そんな作品。

一話ずつ

僕は、我慢して、一日一話ずつしか読まないようにしていた。そうでないと「勿体ない」と感じる小説だ。どんどん読んじゃうってのは、なんだろ、美術館を駆け足で走り抜けるようなもの。

是非、ゆっくり読んで下さい。余韻を楽しまないのは、勿体ないでござる。僕は、長身女性フェチなので、オリーヴの夫のヘンリーを自分に置き換えて読んで見たりもした。不要だが。

話は少しずつ、「変化」していく「時」に流されており、それが絶妙な「もっと知りたい」渇望を生む。変化の仕方も見事でね。倅のクリストファーが無口だったのに、雄弁になって再会する下りとか、描かれていない背景(クリストファーが雄弁になった理由等)をもっと詳しく読みたかったと思わせる奥行きの深さ。それでも、作品はアッサリ進んで行ってしまう。ああ、と手を伸ばすことさえ出来ず、読みながら見送る読者。

これも、ドラマになっているらしい。だが絶対に観ない。観るもんか。絶対に小説の方が面白い。毎回の文章の美しさと結び方。その力強さと綺麗な言葉の並びに酔えるのは小説だけだ。こういうのを読むと、ああ、英語で読みたいなぁと思う。生まれ変わったら英語をもっと勉強しよう。

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感想(0件)

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    作成者: 宮川賢

    何しろ、インプットを多くしないとアウトプットばかりだと枯渇しちゃうし、ヤバいのでまずは読書を。そのためにソロキャンプや旅行や仕事も頑張らないとなりません。なーむー。