オリンピックは、視聴率をとらないと意味がない、という流れになって久しいが、これまでの流れを一望できる新書「オリンピックマネー~誰も知らない東京五輪の裏側~(後藤逸郎)」を読んで、いろいろ唖然(汗)。
アスリート1stとは言えない
2020年東京五輪が延期になり、札幌でマラソンになった。IOCは午前7時スタートにしたのを、小池都知事が「5時スタートにしたらどうですか?」と選手の健康を「より」気遣って「逆提案」したが、IOCは即座に「それはヘリコプターの中継が間に合わないので無理です」と即答した。その映像を見た人は記憶にあるだろう。
つまり、アスリート1stではないじゃないか、と。
視聴率中心と利権
テレビの視聴率が取れない五輪はいかん!というのは有名な革命だった。実際に、赤字になったオリンピックが過去にあった。
なので、テレビ至上主義、つまり放映権の大半を占めるアメリカ中心、というのは(よくないけど)ある意味仕方ない。
だが、利権がとてつもなく大きく、不透明な部分がこの新書の冒頭から詳らかにされる。へぇ~。と呆れるばかり。
政府が立ち退き(追い出し)
だが、この本の後半で明らかにされるのは、神宮前界隈のアパートメントの住民を「さも当然の権利」として立ち退かせている件だ。
この人たちに「立ち退いてもらうことを」前提に、既に話しは進んでいた。その理由もすごい。「80000人のスタジアム」のほうが「なんとなくカッコイイ」からという理由だ。8万人にこだわったのは、それが条件でもないのに、「世界の大きなスタジアムは収容人数8万人らしいね」を元にしてる。それが理由で「強制立ち退き」。恐ろしい。
納得できない住人に、いろいろ手を変え品を変え迫る立ち退き。しかし当然五輪だから期限がある。
嫌がらせをする。大声を出す(出させる)。スロープを急坂に変える(年寄りやハンディキャッパーに移動しづらくさせる)。読めば読むほど、不愉快になる「強制立ち退き」の実態。
結局。8万人のスタジアム必要なかったんじゃね?
というのが現実。あの集合住宅の住民の引っ越しは何だったのか? ダム建設での引っ越しでさえ納得できないのに、不要な8万人スタジアムでの引っ越し。6万人でいいじゃないかという話は「なんとなく」かっこ悪いからと「追い出す」。ううむ。
スキー板をすぐ脱ぐ理由は?
スキー競技のテレビ中継で、ゴールした選手が素早くスキー板を外して、テレビカメラに向かってスキー板を立てた状態で、インタビューを受ける姿を覚えているだろうか。
あれは、メーカーロゴの入ったスキー板裏面を見せる場面なのだ。コントだぁね。
マクドナルドは撤退
マクドナルドは長らく五輪のお得意スポンサーだった。それがこの度、完全に抜けた。営業マンが言う所の「落ちた」って奴だな。
丁寧に理由を語り、問題はないようになっているけれど、その実いろいろあったのだろう。
そして、Airbnbが加わった。こいつぁいいや!と思っていたところにコロナ。
誰も旅行しないじゃないか。来年Airbnbがついたままになっているだろうけど、きっとそれが最後なのかな。なんてことを考えながらCMを見るのも一興です。
コイン投げで入札を決める
上がり続ける放映権料だが、入札が入る限りは、仕方ない。IOCは競り合うABCとNBCに対して「コイン投げ」で最終入札の順番を決めるように指示した。そして怒りを買った。そりゃそうだ。
コインとすですかあああああっ!?
びっくりするよね。まぁ、ほかにやり方がなかったのかな。
五輪開催中止を掲げた東国原英夫が捻り潰されたのは?
石原都知事の後、後継と目された松沢成文が劣勢となった。有力は、「東京大会招致断念を掲げた東国原英夫」だった。この話がとても面白い。
森元首相が動いた。長男伸晃が自民党幹事長だった。伸晃ら周囲の出馬要請にまるで応じる様子がなかった石原慎太郎だが、
森さんは、松沢さんを下ろして(本人は一応納得した)、石原慎太郎続投を促した。だが、石原慎太郎はなかなか「やる」と言わない。ある話で、石原慎太郎は「やる」と言うことになった。そのある話とは。
森元首相が、将来の首相に伸晃を推すと約束したのだ。
確かにその後、森元首相は「石原伸晃を推していた」。森元首相は石原慎太郎との直談判の中でこう「密約」したのだそうだ。
「都知事を降りたら、党幹事長でもある伸晃君の為にならない。彼の首相の目はなくなるよ」
うわああ。親馬鹿狙い。そして、思うつぼ。森元首相曰く(産経新聞)。
「引き続き(石原さんは)やるということになった。その時に都知事は『必ず息子を頼むよ』と」
うわあああ。親馬鹿狙い。そしておもうつぼ。なんだかなぁ~。
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