明るさが怖い「カルト村で生まれました」読書感想

文藝春秋の高田かや著「カルト村で生まれました」という漫画を読んだ。

カルトな村

 そもそもカルト村って定義がある言葉じゃないけど、読めば最も相応しい言い方と解る。

カルト村で生まれました。 [ 高田かや ]

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感想(4件)


 十九歳までそこにいた著者が、それを当たり前だと思って過ごしていた青春の日々を「人がそれを面白がってくれるなら」漫画にしてみようと。

 なので、「こんな酷い人たちがいるのです!」と訴えたいワケでもなければ、あの青春を返せ!とやりきれない気持ちを発露しているワケでもない。

子供は村で過ごす

 カルトな村で育った家の人たちの子供は、親と同居ではなく、村で過ごす。村とは森に囲まれたエリアで、基本は自給自足。鶏を育て、野菜を育てる。その村を管理する「係の人」という大人が複数いて、それ以外は子供か動物。子供はまとまって生活区間で生活する。それを世話係と呼ばれる村の大人(要は他人)が管理してる。子供は朝ご飯は抜き。

 早起きを強いられ、野菜の世話などをさせられる。朝ご飯を食べずに、村の子供はまとまった学校へ行く。学校は「村のやり方」に口出しするのを厄介と思ったか、「他人同士が同時に通学」や「他人が親の立場のように意見してくる」事を看過していた。

 親とは離れて暮らしている。

体罰当たり前

 世話係の大人は怖く、子供のミスを怒鳴り叱り体罰当たり前。正座、平手打ち、暗闇に放置など。衣類は村の子供のお下がりを与えられて着る。

 人通りのある道で炎天下に半日立たせる。全裸で立たせる。髪の毛掴んで引っ張って顔を壁に打ち付ける。叩かれる事が前提なので、「丸一日正座」という罰は、有り難かったと筆者。

ロマのように

 ロマ民族のように、自分のモノはみんなのもの。そういう考え方で所有という概念がほぼない。

 金も持たされないので、学校でふれ合う(村以外の)子供たちとの会話で、

「あ、そのキーホルダー可愛いねぇ」
「あのお店で売ってたよ、安かったよ」

というやりとりがあっても、決して買う事は出来ないのが村の子供たち。欲しいものを手に入れる事は不可能。全ての持ち物は世話係の人に管理されている。

ひもじい

 有機野菜を作っている所なので、野菜は美味しい。だが貧しいので、村の保育所では、優しい世話係の人が

「飴が一つあったよぉ。食べたい人ぉ」

で、朝ご飯を食べさせられない生活なので常に空腹な子供たちは全員が手を挙げる。すると、

「じゃあ、今日は15秒ずつねぇ」

と十五秒ずつ、飴を順番に舐めるのだ。

クスリ

 こっそり薬箱にあったシロップのクスリを飲んでみたら、

「うわっ、甘くて美味しい!」

 と感じて、クスリは美味しいものとなる。

カルト村に生まれました
「カルト村で生まれました/高田かや」序盤の一コマ

怖い村のやり方

テレビは週に30分

 テレビは一週間のうちに、土曜日の「日本昔ばかし」だけを見せて貰える。その時間が来ると、村の宿舎の子供たちがどどどどどどっ!と走ってテレビのある部屋に集まる足音が起こる。

 その放送の中のCMソングだけが村の子供の「歌」であり「音楽」だった。学校へ通う道すがらそのCMをソングを歌う。

ペット禁止(殺)

 ある時、下校時に見つけた野良猫を村へ連れて帰るが、

「うーん、猫は鶏を食べちゃうから飼えないんだよぉ」

と優しい世話係のお兄さん。

「この猫はこっちに任せて宿舎に帰りなさい」

と猫を預かって子供たちを見送る。その際、ずっとこっちを笑顔で見ていたお兄さん。

筆者が「猫が心配だからちょっと様子を見てくる」と戻り、トイレに行ったフリをして、

優しいお兄さんを見ると、宿舎へ向かう友達を笑顔を見送りながら、後ろ手で先ほどの猫の首を絞めていた。猫がもがいていた。

「まさか?」
「何かの見間違えじゃない?」

と思うものの、翌日その場所へ行くと猫の血の跡が点々と。

……怖い。

手紙は検閲

手紙は検閲されて、村に都合の悪いことは黒線で消される。友達から届いた手紙も黒線が入っているし、送る手紙も黒線が入って相手に届く。

あり得ないけど実話

 あり得ないように思えて実話というのが凄い。

 だが、終始「陽気に描かれている」それが逆に不気味。本当に陽気に楽しそうなトーンで綴られる。
 今が幸せだからいいのだよ。と言わんばかり。

 どうやら「幸福会ヤマギシ会」がモデルのようだ。

 所有の概念を持たないヤマギシ会。ユートピアを目指したが時代に合わせて姿を微妙に変えつつ現存してる。恐ろしい。

ヤマギシ会実顕地
ヤマギシ会・多摩実顕地(町田市忠生に実在)

 村のお年寄りの暮らしは、「むらネット」で公開してる。

まとめ

 知らない世界を教えてくれるのは、書籍が一番いい。リスクがない。疑似体験も出来るし、一人称の目線で読める。つまり追体験が出来る。

 さよならサイレントネイビー~地下鉄に乗った同級生~
 これは、地下鉄サリン事件の実行犯のドキュメント。どれだけ酷い実態だったかとはまるで違った確度から解きほぐした。

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 アルコール中毒患者としての治療の日々と厄介な生活になったいきさつや奇天烈なる「患者」の日常をエンタメ路線で大解剖。ノンフィクションとしても迫力満点の漫画。

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 刑務所に入ることになった著者の刑務所での生活を悉に描いて、刑務所体験が出来る。日常が暇なので、掃除の時に一本の陰毛を見つけただけでそれが誰のか?で数日間笑って会話出来楽しめる、そんな内部の人たち。

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 この「カルト村で生まれました」も同様で、丁寧に描いているけど、上記と同様に「同情を求めるものでもなければ、何かに物申したいもの」でもない。そこが清々しく、逆に怖い。自分の人生を否定するのは足踏みするにせよ、もう少し、違和感ってものを共有したいという渇望が残る。それが一番怖い。のよね。

 自分は、無宗教だけど、知らない間に「宗教に対しての偏見が根付いているのではないか?」が心配だ。そうやって宗教家を傷付けてはいまいか。と。そんな目線でも読んでみた。ともあれ著者が陽気なのは何しろ救い。だから描けるほのぼのコミックエッセイ。すげーぜ。

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感想(4件)

投稿者:

Miyacolor

まぁ、なんとなく楽しく生きていますよ。それで十分でありながら、それでいいのか?って自問自答する日々ですかね。